少数歯欠損の義歯について

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歯科医師になって20年あまり経ってしまったが、卒業後なんとなく義歯が好きになり、少し義歯にこだわりながら診療をやって来ました.おそらく広島県では、一番多く一本義歯を作っていると思います。しかし元来自分の歯が良かったので、自分の実体験はなく、患者様を通して、想像だけで義歯治療を評価をしてきました.

幸か不幸か、昨年右下の第2大臼歯を破折で失い、やっと義歯を実体験できるようになりました.普通はこのケースで、義歯を入れる歯科医師は少ないのですが、私は8年ほど前よりこういうケースに小さな義歯を作るようにしてきました.ただ抜歯してすぐに義歯を入れて、噛み合わせがずれないようにしたいのですが、抜歯部の骨がすぐやせるので義歯が安定せず、食事の時に使い物にならないと患者様よりよく苦言をいただきました.それで骨がしっかりするまでの間は義歯装着率が悪く、その事が骨がしっかりしてからも、義歯を装着していただけないことを助長していると思っていました.ただ私から見ても装着しないのはしかたないとは思え、骨が安定してから、装着するように指導していました.そして、いざ自分をその立場に置いてみると、なるほど抜歯直後は食事をすると、すぐに外れて使い物にならないことが分かりました。

左上→右上→左下→右下と作りました

自分にできない事を患者様に押しつける事はできないので、対策を検討しました.なぜ抜歯直後に義歯を入れるのか?と言うと、下顎がずれないようにするためです、また、現代人の咀嚼は咬合系に殆ど負荷を与えず、むしろ睡眠時の歯ぎしり、噛みしめや覚醒時の無意識の噛みしめが咬合系に負荷を与え、額を偏位させるという考え方が有り、私自身もこの考えを信じています.とすると、義歯は咀嚼するために、装着するという固定観念を外せば、少数歯の欠損の義歯は食事の時は外し、まず寝る時に装着する、次は食事以外の起きている時、最後に食事の時という優先順位になります.実際に自分でやって見たら、抜歯直後でも食事以外は十分装着可能で問題は有りませんでした.もちろん義歯を入れている違和感は多少ありますが、自分としては許容範囲で、義歯ではなく他の健全な歯を削って対処したいとは思いませんでした.抜歯後2ヶ月ほどして、ある程度骨が安定してから、義歯を手直ししてからは、食事の時も外れず使えるようになりました、ただ義歯が無くても食べられるのと食事で義歯が汚れるので、食事の時に外す事もよくあります.多数歯欠損の場合は外すと食べられないのでこのやり方はだめでしょう.

以来患者様にも、この考えを時々説明して、結構受け入れていただいております義歯は食事のために入れる物で、うっとうしいので、食事の時だけ装着するいう患者様は多いようですが、それとまったく逆の話で、初めは変な顔をされることがおおいです.でも顎の偏位の説明などをすると結構賛同していただける事も多く、この考えにより、少数歯欠損の義歯の装着率はより上がったと思います.ただ私の医院は歯を削るのが嫌いで義歯ばかりいれるという評判ですので、そういう治療を希望する患者様が多くなっていると思います.義歯ではなく、インプラントで対処する方法もあるとは思いますが、インプラントは余り好きではないし、義歯でいける患者様は義歯でいった方が良いと思っていますので、まずは義歯を作るようにしております.遊離端義歯で説明してきましたが、もちろん中間欠損もしかりです.今では義歯でガムも噛めるし、非常に快適です。

ただ食事をすると義歯回りは他の部分よりも汚れやすいようで、歯磨きしないとなんか汚れているように感覚がしてうっとうしいです.やっぱり義歯は食事のたびに洗うべきですね、茶碗や箸と同じく食器感覚で対応する必要が有ります.外して洗えるところが義歯の利点でありこれをどんどん活用すべきです.そうしないと外せるという利点が無くなり、外れるので人目に触れ、嫌な感じがするという欠点にとなってしまいます.もうひとつ、義歯を入れると年を取ってしまった、というイメージを多くの患者様は抱くようですが、固定性のブリッジも立派な入れ歯なのです、ただ外して口の外に出すことがないので、目立たないだけです.ですから義歯は必ずよく洗い、清潔を保つようにしてください、汚れているとよけいに不快な思いが強くなります

毎日診療しながら、思っている事のうち、小数歯欠損に関ることを書いて見ました.ご意見、ご批判があればぜひお願いします.